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思考の取引

ジャン=リュック・ナンシーの『思考の取引 書物と書店』(岩波書店、2014年)を、ここのところ何度となく読み返しています。同書の言葉に触発された「彗星五十」展は、本日無事に終了しましたが、空っぽになった展示ケースを後にしても、『思考の取引』の美しい表紙を開くと、また新たなインスピレーションを得られるような気がしてくるから不思議です。

昨日は、ネットで注文していた原書が届いたのですが、こちらも清々しい装丁。ただし、本当のオリジナル版は五十部限定(この事実も、「彗星五十」のコンセプトの一つとなりました)ということで、訳書の冒頭にも、次のような但し書があります。
本書の初版は、口絵にジャン・ル・ガックの水彩画を配し、ヴィズーユ製紙のアイボリーのレイド紙に五十部限定で印刷された。(西宮かおり訳)
いつの時代も、書物の刊行とは、複製技術の実践を意味しています。ですがその一方で、「書物」それ自体は、やはりいつの時代にあっても、そうした「複製」という文化的営為に批判的な介入を試みる、そうした稀有なメディアであり続けてきました。

シンプルなのに奥が深い、といった紋切り型の賛辞を、素直に口にできてしまう書物論。おすすめです。